こんにちは、須田大貴(@dasu_j_skillup)です。
最近は少なくなりましたが、若手のころは臨床でかなり痛い目を見たことがありました。
皆さんもそんな経験ありませんか?
昔の私は自身リスクに対して対処ができていませんでしたが、リスク対処を考えるようになってからは痛い目を見ることは少なくなりました。
今回は、リスクヘッジができなかった私が、リスクに対する考え方をお伝えできればいいなと思います。
私が見た痛い目とは
私も実は結構痛い目を見てきました。
患者さんに怒鳴られることはなかったのですが、いろいろあって、、、
- 上腕二頭筋長頭腱の腱内断裂を起こしかけているのに部活の許可を出してしまう
- 疑いを持ち紹介状を出すも、ドクターが大丈夫と言ったのを鵜呑みにした結果、セカンドオピニオンを紹介せず、大病を見逃す(自分の判断を信じられなかった。)
- 治るといった症状が、全然症状すら取れない
などなど。
②に関しては一命をとりとめましたが、
- 自分の手の感覚
- 状態の聞き取り
を信じることができなかっことを悔やみました。
他にも上げればきりがありません。
しかし、間違いたくもない失敗を数多くし、修正をしてきたからこそ今の自分があるのだと思います。
大体その時は自分の転換期なので、飛躍してみてください。
基本の組織病理から考える
症状は患部に起きていますが、少し掘り下げると本質的には細胞から起こっています。
皆さんは、患部や症状の原因部分の細胞の状態を考えていますか?
細胞の状態は病理学の観点から考えてみることをお勧めします。
組織病理学とは?
現代病理学の父と称されるRudolph Virchow (1821-1905)は顕微鏡を用いて病変の細胞や組織の詳細な観察を行い、組織病理学 を打ち立てました。
さらに20世紀に入ると、外科的生検組織を組織学的に診断する外科病理学が主として米国で発達し、病理学 は純粋な科学としてのみならず医療検査の一部として重要な地位を築くこととなりました。
そして、現在に至るまで、病理組織診断は疾患の診断の必要不可欠な手法として確固たる地位を築いています。 病理学とは から引用
偉大な賢人がすでに様々な研究から、身体負荷から体の組織変化を記しています。
オステオパシーのDOジャン・ピエール・バラルの著書にはとても詳しく記載しています。
『このような刺激を受け続ける組織は、このように変化する。』となっているので、応用しない手はありません。
例えば、神経。
- 神経は軽微な外傷から圧迫を受けると神経外膜・神経の間に浮腫を生じる
- 回盲弁の異常は椎間板内圧の上昇を招く
- 頭蓋刺激により脳の溝が開くことにより副交感神経になってくる
などなど。
いろいろな本が出ていますのでご一読くださいませ。
刺激方法を間違えてしまうと?
もし、組織がどのようになっているか考えないで施術をしてしまうと、
症状が治らないばかりではなく、増悪までさせてしまいます。
ここでは、神経について記します。
神経に関しては、神経の起始部から末梢にかけての刺激を行います。
坐骨神経で考えると、足趾の最終分布を末梢へ引っ張るような感じです。
ちなみに、パトリックテストをしてから、指を引っ張ってもう一度パトリックテストをすると大体可動域が改善することがあるのでやってみてください。
復習
パトリックテスト
Patrick(パトリック)テスト:仰臥位で股関節を屈曲・外旋し,足部を反対側の大腿にのせて胡座をかいたような姿勢にして膝を下に押しつけると股関節痛や可動域制限が誘発される。
ここで、逆方向へリリースをかけると場合によっては悪化してしまうことがあります。
そのため、刺激の方法を選ぶのは患者さんのためには重要なポイントですよ。
細胞がどうなっているかを考えよう
介入前に皆さんは患者さんの患部の細胞がどうなっているか、考えて想像していますか?
細胞は患者さんの生活習慣・運動習慣に左右されます。
例えば、
- 同じような動作を長時間続けた筋肉
- 神経症状時の神経の状態
- 肉離れを起こした幹部の状態
- 感染を起こした組織
これらを例にして再度解説したいと思います。
同じような動作を長時間続けた筋肉
同じ動作を続けると、筋肉は酸欠と微細な損傷をを起こします。
そうすると、
微細な損傷を体は治そうとする
↓
しかし、原因となる動作を繰り返すことで損傷が治らないかつ筋肉を使い続けるので酸欠を起こす。
↓
正常な細胞へ分化できない
↓
伸張性、酸欠を起こしやすい未分化神経血管組織が完成する
このような、組織には刺激の強い施術が必要なことがあります。
その理由は、一度組織を壊す必要があるからです。
- 肘を使った施術
- 母指を使って何度も組織をこする
- カッサなどで皮下組織と表層筋膜の循環を改善する
このような、刺激強度を強くした施術が必要になってきます。
この場合あざや揉み返しのような痛みが出ることがあります。
なので、
- 筋組織の状態の説明
- なぜ強い施術が必要なのか
- 今後このような現象が起こる可能性がある
ということをしっかりと説明しましょう。
神経を侵害された時
学校で習うことはないと思いますが、神経が障害された時は神経周膜内の浮腫が起こります。
その理由は、神経の中にも血管があり圧迫され『神経の中で血流障害が起こり内圧が上がり、水分が心臓へ戻らない』からです。
この場合、神経の直上からの圧迫だけをしてしまうと、圧力が逃げなくなってしまいます。
神経付近の施術は方向をつけ圧力を分散させながら、ながら施術を行う必要があります。
方向をつけながら施術をすることで、神経にもストレッチがかかるため浮腫が取り除けるようになります。
一点注意があり、
神経の施術の場合は近位方向への施術は避けましょう。
この場合神経に対して効果が出ないため、基本的には遠位に伸ばすように施術を行いましょう。
肉離れなどの外傷時
肉離れの際に近位から遠位に対して手技を行ってしまうと、治癒を遅らせてしまうことがあります。
肉離れは、筋組織が切れてしまっている状態です。
損傷の構造から考えるに、切れた断端を近づけてあげる必要があります。
つまり、断端を上下左右に集めてあげるように手技を行います。
過去の成功体験ばかりを充てにしない
過去の成功体験にすがってしまうとこれまた痛い目を見てしまいます。
過去に成功した患者さんと目の前担当しているの患者さんは違うからです。
今担当している患者さんが、過去に担当した患者さんと
- 同じ幹部
- 同じ動作
- 同じ性別
- 同じ季節
の患者でも、目の前の患者さんは改善しない事は往々にしてあります。
検査をして、施術して、再検査すると全然改善してないとなると、患者さんからの信用も無くしてしまいます。
型にはまると、失敗する
上記のように似たような症状に対して『型』を作ってしまうと、同じような施術をしてしまい痛い目を見ます。
では、型には嵌らないようにするにはどうするべきか?
それはクリティカルシンキングをできるようにしましょう。
クリティカルシンキングとは?
クリティカルとは、批判的思考法と呼ばれていいて、
物事の根底にある問題の原因を再度検証し、物事の本質を捉える思考法
の事を言います。
詳しくは、上記のブログを参照にしてください。
一般臨床と内科を勉強しておこう
痛い目の中で、一番多いのはレッドフラックの見逃しです。
レットフラックの見逃しをなくすには、一般臨床を勉強するしかありません。
一般臨床とは、一般臨床医学は人体に生じる内科的疾患を扱った分野です。
そのため、数多くの疾患の症状が記載されています。
まずは、軽いテキストを読んで復習しましょう。
↑元担任が著者
特に関連痛が疑われる場所は明確に覚えておきましょう
明確な関連痛がある疾患は確実に覚えましょう。
その理由は、関連痛は骨格筋に痛みを出すため整骨院・鍼灸院・整体院への受診確率があるからです。
ここで、実話をお話しします。
私『本日はどうされましたか?』
患『背中が痛いんです。』
私『わかりました、何をすると痛みますか?』
患『何もしなくても痛いんです。』
私『わかりました、何か運動や背中を痛めるような動作をしましたか?』
患『何もしてないんです。』
私『なるほど、うつ伏せになって背中を触らせてください。』
患『わかりました、そういえば先生。
背中だったり、腰だったり痛みが移動するんですよね。』
私『(触診中)そうなんですね…!!(背部に拍動を感じる)
(こんなところで拍動を感じるのはおかしい…。もしかして…。)
仰向けになってください。』
私『(腹部で強い拍動と腫瘤を感じる)○○さん、病院を紹介いたしますので、いったん診察を受けてみてください。その後に、ご連絡をいただけますか?』
患『なにかあるんですか?』
私『背中や腰の硬さは確かにあるのですが、もしかしたらお腹が原因で痛みを出しているかもしれません。しっかり検査してくれる病院を紹介いたします。保険使って健康診断を受けるつもりで気軽に行ってきてください。私もお腹の状態がわかってから施術したいので、検査が終わった一週間後に見せてください。』
患『わかりました!』
ー 3日後 ー
患『(電話にて)先生、腹大動脈に腫瘤がありました。今日病院に行ったんですけど、緊急入院になりました。』
これは少しだけ脚色した、実話です。
なぜ見抜けたかというと、一般臨床を勉強して忘れなかったからです。
命に関わる症状に関しては、忘れたくても忘れられません。
中でも、
- 動脈疾患
- 心疾患
- 脳疾患
一歩判断を間違ったら、命に関わることは忘れないようにしましょう。
まとめ
今回の記事をまとめます。
- 組織を考える
施術する組織の状態を考えましょう。組織は状態によって施術法が変わります。
- 圧迫を受けた組織
- 神経組織
- 筋断裂を起こした組織
これらは刺激方法が異なります。
- 型にはまらない
患者さんを過去の患者さんに照らし合わせてしまうのは、お勧めできません。
過去に成功した患者さんと、目の前の患者さんは違います。型にはまらないためには、『クリティカルシンキング』を身に着けておきましょう。
- 一般臨床を勉強しておく
今回は、臨床で痛い目に合わないためのリスクヘッジについて書きました。リスク管理は時と場合によっては、患者の命の管理になることもあります。
例えば、
- 動脈疾患
- 心疾患
- 脳疾患
などはとても大事になります。
リスクヘッジは自分も守り、患者さんを守ることにもなります。ですからいつもこのブログに書いてあることが参考になりましたら、ぜひご活用ください。